第二種業者の検査のツボ(3)


分別管理の具体的な方法については次回以降お話します。今回は、ファンドの運営をしている第二種金融商品取引業者の方に、今すぐ、やっていただきたいことについてお話します。

<定款への記載>
分別管理の方法などについては、基本的に、定款に記載することが法令で義務付けられています。定款に記載しなければ、即、法令違反で、悪くすると営業停止です。

「金融商品取引法のコンプライアンスならお任せください」という行政書士のホームページがあふれていますが、ファンド運営者の方で、行政書士に登録手続きを任せた第二種金融商品取引業者の方は、定款に「分別管理」という項目を行政書士が追加しているかどうか確認してください。

分別管理について「内容をよく知っている」という行政書士にあったことがありませんので、抜けているかもしれません。もし抜けていたら、緊急に臨時株主総会を開催してでも分別管理の方法などについて定款に記載してください。

<コンプライアンス部の設置の必要性>
余談ですが、仮に「行政書士に任せたんだけれども、定款は目的の変更しか助言をもらえなかった。分別管理を記載するように助言されなかったから営業停止になった」としても、悪いのは行政書士ではありません。ですから、損害賠償請求など、行政書士に責任をとってもらうことはできません。

定款が不備だったために登録抹消処分となっても、行政書士の責任ではなく、行政書士に一切を任せきりにした第二種金融商品取引業者の方の責任です。定款は、会社が責任をもって作成するものですから、誰のせいにもできません。

第二種金融商品取引業者の方は、規模が小さな会社が多いのが実情です。その結果、コンプライアンス部を設置しない会社が多く、コンプライアンスの担当者は決めても、他の業務を兼任させている例がとても多いです。

けれど、これはダメです。「ダメと言われても、3人でやってるんだから、コンプライアンスの専任者なんておく余裕はないよ」と言われるのはわかっていますが、ダメなものはダメです。投資顧問会社を除き、金融商品取引業者である以上、コンプライアンス専任者の設置は必須なんです。

<コンプライアンスの重要性>
拙著「金融商品取引法マニュアル」(住宅新報社)にも似たようなことを書きましたが、金融商品取引業者は、利益よりも、コンプライアンスを優先しなければ、いずれ当局の検査でつぶされます。実際、3ヶ月とか6ヶ月とか営業停止処分を受けたら、大赤字はほぼ確実ですから、耐えられずに廃業せざるを得ない会社も出てきています。

「利益を上げないと、コンプライアンス専任者だって置けないじゃないか。本末転倒。」と考えがちですが、逆です。コンプライアンスの専任者を置ける会社だからこそ、金融商品取引業の登録が認められ、業務ができて利益も出せるんです。この意味では、財務局の登録時の審査が甘すぎることに問題があるのかもしれません。(もっとも、行政書士の友人達に聞くと、財務局の審査は厳しくなっているようですね。)

<証券六法>
私が、毎回驚くのは、第二種金融商品取引業者の方の中には「証券六法」を持ってない、あるいは知らない会社があるということです。証券六法でなくても、今は、ネットで金融商品取引法や関連法令を探すことができますが、やはり、ネットで検索するよりも証券六法の方が早く知りたいことを知ることができます。

証券六法とは、もともと証券取引法時代だったときの名残で「証券」という名前が付いていますが、金融商品取引法を初め、金融商品取引業者の業務に関する法令を集めた法令集です。字が小さいのが難点ですが、金融庁も証券取引等監視委員会も財務局も、皆さん証券六法を使っていますので、証券六法は、必ず、購入するようにしてください。「新日本法規」という会社が出しています。最新版は、平成22年版で6400円です。

証券六法は、第二種金融商品取引業者の方なら、「持っている方がよい」ではなく「必ず、持っていなければならない」ものです。そして、コンプライアンス担当者は、大げさではなく毎日、証券六法と付き合わせながら、法令違反がないことを確認しなければなりません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
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