第二種業者の検査のツボ(5)


第二種金融商品取引業者の検査の中で最も多い指摘事項は、第三者に「無登録営業をさせた」というものです。第二種金融商品取引業者に「ありがち」な失敗です。

<不動産信託受益権の売買の場合>
現物不動産の売買では、一つの取引に3つも4つも宅建業者が媒介に入ることは珍しくありません。こうすることで手数料を分け合い、ある取引で貸しを作った宅建業者は、次の取引に入れてもらうことによって貸しを返してもらうというのが、規模の小さな宅建業者の中では慣習のように行われています。

不動産信託受益権の売買の場合にも、この慣習にならうことはできなくはありませんが、不動産信託受益権の売買の媒介は、第二種金融商品取引業者でなければできませんから、すべての媒介者が第二種金融商品取引業の登録をしていなければ成立し得ません。

ところは、実態として、第二種金融商品取引業者の手数料の取り分を多く、そうでない宅建業者の取り分を少なくして、不動産信託受益権の売買の媒介に、第二種金融商品取引業者ではない宅建業者が入っているケースがあるようです。

もっと悪質(?)になると、契約書上は第二種金融商品取引業者だけが媒介者となって、手数料の一部を、顧客を紹介してくれた本当の(?)媒介者に支払うケースもあるという話を聞いたことがあります。こちらは、悪質で(確信犯だから)、言語道断です。

いかなる状況であっても、第二種金融商品取引業者でない限り、不動産信託受益権の売買も売買の媒介もできません。媒介には単なる紹介も含まれますので注意してください。

第二種金融商品取引業者が、そうでない宅建業者も媒介者(紹介者)に入れた場合、第二種金融商品取引業者は、「無登録者に金融商品取引業をさせた」として、確実に法令違反を問われ、営業停止もあり得ます。一方の第二種金融商品取引業者でない宅建業者は、金融商品取引法違反で逮捕、最悪の場合、3年の懲役です。

これは、脅しではなく、実際に公表されている検査結果に書かれている本当の話ですので、第二種金融商品取引業者である宅建業者の方には、まず、自社が宅建業者であることを忘れるくらいの慎重さが求められます。

<ファンドの私募の場合>
ファンドの私募(自己募集)も不動産信託受益権の売買と同じようなことが起きています。第二種金融商品取引業者のファンドの運営者(匿名組合で言えば営業者)が、第二種金融商品取引業者ではない第三者に出資者を紹介してもらい、謝礼としていくらかでも第三者に支払えば、「無登録者に金融商品業をさせた」ことになり、法令違反になります。

<どこから金融商品取引業か>
不動産信託受益権やファンドなど、金融商品取引法で「有価証券」とみなされた権利の取引においては、売買の相手方になったり、売買の媒介をしたり、自己募集を行ったりすることはもちろん、顧客を紹介する行為も口添えする行為も、とにかく、金融商品取引契約に何らかの形でかかわれば、金融商品取引業です。

「そんな大げさな。紹介なんてどの業界でもあるじゃない。」と思われた方は、はっきり言いますが、まだ、金融商品取引業者の意味がわかっていません。他のどんな業界に紹介なんて普通に許されても、金融商品取引業界では許されないのです。ですから、第二種金融商品取引業者の方は、いかなる形式であっても、登録をしていない者を契約にかかわらせてはダメです。

ちなみに、金融商品取引業であるかどうかの判断に、手数料をもらったどうかは関係ありません。第二種金融商品取引業者でない者が、仮にボランティア活動として、あるいは親の事業の手伝いとして無償で顧客を紹介しても、それは無登録営業であり、金融商品取引法違反になります。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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