募集要項からわかる検査のポイント


証券取引等監視委員会が、「証券検査に従事する職員」、つまり、検査官の募集をしています。

興味のある方は、こちらをご覧ください。

証券取引等監視委員会が検査官の募集を行うことは珍しくなく、今回は、不動産鑑定士を募集していますから、当然、不動産信託受益権の取引に関わる二種業者、助言業者、運用業者に対する証券検査の体制整備が目的です。

もっと細かく言えば、不動産鑑定士の募集ですから、不動産信託受益権の取引価格の妥当性の検証が、不動産関連会社に対する証券検査の重点項目の一つであることがわかります。

取引価格の妥当性の検証が証券検査の重点項目である理由は、金商法の目的が「公正な価格形成」にあるからです。

<証券検査>
金商業者に対する証券取引等監視委員会の検査は、「証券検査」と呼ばれます。なにも、証券会社に対する検査だけを証券検査と呼ぶのではなく、金商業者に対する検査は、すべて証券検査です。

<検査の2大ポイント>
証券取引等監視委員会の募集要項の中で、金商業者にとって、最も重要な項目は「職務内容」です。

「証券取引等監視委員会の証券検査官等とともに、金融商品取引業者等に対して検査を実施し、法令等違反行為の有無や内部管理態勢等の適切性・実効性などの検証を行う。」とあります。

ここから、証券検査の2大ポイントがわかります。以下の2つです。

1 法令等違反行為の発見

2 内部管理態勢等の整備状況の検証

<法令等違反行為>
法令等違反行為が発見されれば、当然、検査指摘事項になります。特に、「取引」、「助言の内容」、「運用の内容」に法令等違反がないかどうかは、つぶさに検証されます。

証券検査では、取引の結果のみが検証されるわけではないことに注意が必要です。

取引の結果、助言の内容、運用の結果は、法定帳簿が正確に記載されていれば、法定帳簿を見ればわかります。

証券検査では、取引の結果のみならず、取引の動機(動機の違法性)、取引に至る過程(過程の違法性)、取引が及ぼす影響(影響の違法性)なども検証されます。

例えば、取引の動機が、グループの利益を優先し、関係会社を利することにあったり(利益相反の問題)、顧客との取引継続を優先し、顧客に特別の便宜を図ることにあったり(特別の利益の提供の問題)すると、即、法令等違反です。

<内部管理態勢の整備>
内部管理態勢等の整備状況が不十分であれば、検査指摘事項になり得ます。

平成27年5月29日施行の平成26年改正金商法で、金商業等府令第70条の2に規定するように、社内規則の整備と、社内規則を役職員に遵守させるための体制の整備が、すべての金商業者の義務になっていますので、この2点のいずれが欠けていても、法令等違反行為です。

コンプライアンス・マニュアル、コンプライアンス・プログラム、懲罰規程など、監督指針又は検査マニュアルで整備すべき社内規程や社内方針がないと、内部管理態勢の不備と指摘される可能性もあります。

なお、「体制」と「態勢」の違いですが、証券検査マニュアルが作成されたとき(15年程前)の証券取引等監視委員会の説明会では、「体制」は一度作ったら維持するものである一方、「態勢」は環境の変化に応じて常に変化するものであるという趣旨の説明があったことを覚えています。

ですから、内部管理態勢の見直しが行われていないこと自体も、内部管理態勢の不備と指摘される可能性があります。

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投資運用業の登録4


不動産関連特定投資運用業の登録をする過程で、国交省の総合不動産投資顧問業の登録をするわけですが、総合不動産投資顧問業の登録申請の過程で、組織再編・人事異動が必要になることがあります。

<兼任・兼職の禁止>
総合不動産投資顧問業の登録申請においては、前提としていくつかの条件をクリアーしなければなりません。

一つは、資本金要件で、資本金は5000万円以上であることが求められます。金商法の施行に伴い、投資運用業に係る登録要件の最低資本金額に合わせて改正されたものです。

もう一つは、人的要件です。総合不動産投資顧問業の登録の中で、最も有名な人的要件は、「判断業務統括者」です。

判断業務統括者は、経験として、①数十億円以上の不動産に関する投資、取引又は管理に係る判断の経験があり、②これらの判断に係る業務に2年以上従事し、③各業務について適切な判断を行ってきたと認められることが求められます。

判断業務統括者には知識要件もあり、不動産コンサルティングマスターや不動産証券化協会認定マスターなどの要資格者であることが必要です。

「当社は、資本金は5000万円以上だし、判断業務統括者の資格要件を満たす者もいるから登録要件は満たしている」

こう考える方が、実は後を絶ちませんが、ことはそう単純ではありません。

判断業務統括者の設置は最低限の要件で、他にも営業所の業務を統括する者、投資判断を行う者、助言業務を行う者などを設置しなければなりません。

もっとも、実務で最も問題になるのはこれらの点ではなく、部門長は兼務・兼任・兼職ができない点です。

例えば、投資運用部と投資営業部があった場合、両部門の部門長を同一人物にすることができません。投資運用部長と投資営業部長は別人でなければならないということです。

投資運用部と投資助言部があっても同じことで、この場合は、投資運用部長と投資助言部長は異なる人物でなければなりません。

したがって、投資運用部と投資助言部があった場合、金商法では、運用と助言の統括者(政令で定める使用人)を投資運用部長兼投資助言部長にすることができますが、不動産投資顧問業登録規程では、兼務発令ができないという事態が生じます。

この場合、投資運用部長と投資助言部長を異なる人物にして、政令で定める使用人を増員する必要性が生じる可能性があります。

兼務ができないのは、部が室であっても同じです。

また、部門長が兼務できないのだから、例えば、総務部長と経理部長は兼務できません。

兼務・兼職・兼任のすべてが認められないのですから、例えば、営業所の業務を統括する者が、代表取締役(社長)だった場合、代表取締役は、親会社の取締役や部長を兼職することができません。

金融商品取引業者は、内部監査部(名称は自由)の設置が必要ですが、親会社の内部監査部長と子会社の内部監査部長を兼職することもできません。

<内部監査部>
実際、不動産関連特定投資運用業・総合不動産投資顧問業の登録の過程においては、「内部監査部」が、四方八方の要件を満たさないとならないため、苦労される会社が少なくありません。

まず、不動産関連特定投資運用業に係る登録を受けようとする者は、多くの場合、不動産信託受益権等売買等業務を行うため、二種登録をします。登録要件の一つは、内部監査部門の者に宅地・建物の取引に関する知識・経験があることです。実務では、原則として、宅建主任者の資格が求められます。

次に、不動産関連特定投資運用業を行う金融商品取引業者の内部監査部門は、実務で、内部監査の経験者を置くことが求められます。

さらに、こちらは、総合不動産投資顧問業の登録において、内部監査部門の部門長は、兼務・兼職・兼任ができません。

最低限、この3つの要件をクリアーしなければなりません。

「当社には、金融商品取引業者の内部監査経験者の宅建主任者がいる」という会社は、相当恵まれています。

現実的には、ほとんどの会社が、3つの要件を満たすために、複雑なパズルを解かなければなりません。

各社各様なので「正解」はありませんが、内部監査部門のあり方は、不動産関連特定投資運用業・総合不動産投資顧問業の登録を受けるための難問の一つです。

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日頃は、ブログ「これでわかった!金融商品取引法」をご覧頂き、ありがとうございます。

また、お問い合わせ、ご質問、コメントも頂き、勉強になり、大変感謝しています。

お問い合わせ、ご質問、コメントにつきましては、ブログにも書いております通り、次のルールをお守りください。

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私も、すべてを公表の上、ブログを更新していますので、匿名など、これ以外のお問い合わせ、ご質問、コメントには回答いたしかねます。あらためてご了承願います。

今後とも、「これでわかった!金融商品取引法」をよろしくお願いいたします。

筆者:川崎善徳

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不動産ファンド5


さて、ここで一つ注意点があります。

<注意点>
不動産信託受益権のような第二項有価証券の場合、発行者が有価証券を発行し、投資家に取得勧誘する行為は、取得勧誘の結果、不動産信託受益権を所有することとなる者の数が500名以上であれば募集、未満であれば私募と呼ばれます。

取得勧誘とは、投資家に「取得しませんか?」と勧誘する行為のことです。

テナントビルの例の場合、発行者は委託者兼当初受益者でしたから委託者が不動産信託受益権の譲渡先を探す行為は、募集又は私募です。

ここで問題です。第二種金融商品取引業者は、委託者兼当初受益者から、転売目的で、不動産信託受益権を取得することができるでしょうか。不動産信託受益権の取引なのだから、第二種金融商品取引業者であればできると考えますか。

答えは、NOです。

<引受け>
なぜなら、転売目的で発行者から有価証券を取得する行為は、元引受けといって、立派な、第一種金融商品取引業だからです。

転売目的で発行者である委託者権当初受益者から不動産信託受益権という有価証券を取得する行為は、第一種金融商品取引業です。したがって、第二種金融商品取引業者は転売目的で委託者権当初受益者から不動産信託受益権を取得することはできないのです。

第一種金融商品取引業者として登録を受けていない第二種金融商品取引業者が転売目的で不動産信託受益権を取得をしてしまうと、最長5年以下の懲役刑です。

では、第二種金融商品取引業者が、発行者と譲渡先との間に入るためにはどうしたらいいでしょうか。

<募集の取扱い・私募の取扱い>
簡単です。みずからは取得しないで、発行者に代わって発行者のために不動産信託受益権の取得勧誘を行い、不動産信託受益権の譲渡先に直接所得させれば良いのです。

発行者に代わって発行者のために取得勧誘をする行為を、募集に際して行われれば募集の取扱い、私募に際して行われれば私募の取扱いといいます。

信託受益権の募集の取扱いや私募の取扱いは第二種金融商品取引業です。ですから、第二種金融商品取引業者ができます。

不動産信託受益権の発行者が不動産信託受益権を譲渡する際、第二種金融商品取引業者は、募集の取扱い又は私募の取扱いだけを行えば良いのです。決して、みずから取得してはいけません。

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不動産ファンド1


不動産市況が回復の兆しを見せ、不動産ファンドがあらためて見直された結果でしょうか、あるいは不動産特定共同事業法が改正されたためか、第二種金融商品取引業者の登録件数が増加しています。第一種金融商品取引業者の数が減少傾向にあるのと対照的です。

このシリーズでは、不動産ファンドにスポットを当て、不動産ファンド、特に、不動産信託受益権やGK-TKスキームと金融商品取引法の関係について解説していきます。

<信託の受益権>
信託の受益権は第二項有価証券と金融商品取引法で定義され、第二種金融商品取引業者として登録を受けていない者が取り扱うことができません。登録を受けることなく取り扱った者は、最長5年の懲役刑です。

信託の受益権とはなんでしょうか。あらためて、復習しておきましょう。

抽象的に話すとわかりにくいですから、具体的にテナントビルの信託を例にとって話します。

<信託>
信託は、委託者、受託者、受益者の3者が登場人物です。「委託者」は、テナントビルという現物不動産の所有者です。委託者は、受託者である信託銀行(信託会社)と信託契約を結び、信託銀行にテナントビルの管理を委託したとします。

まず、委託者はテナントビルを受託者である信託銀行に譲渡します。所有権は、当然、受託者に移転します。

「受託者」は、テナントビルを取得し、信託契約に基づき、テナントビルを管理する者のことです。具体的には、テナントビルのテナントに賃料を請求し受領します。

受託者が受領した賃料は、受益者の請求により、受益者に支払われます。「受益者」とは、信託契約の効果として、信託銀行(受託者)に、「賃料を支払え」という請求することができる請求権を有する者のことです。

この「賃料を支払え」と受益者が請求できる請求権こそが、「信託の受益権」です。

<受益権の譲渡性>
不動産信託受益権を有する受益者は、不動産信託受益権を他人に譲渡することができます。こうして、不動産信託受益権は市場に流通する可能性があるわけです。金融商品取引法が、信託の受益権をみなし有価証券として規制の網をかけた理由です。

譲渡があると、実務では、信託銀行が「譲渡承諾書」を発行します。不動産信託受益権は、受益者が受託者(信託銀行)に「賃料を支払え」と請求できる権利ですから、債権です。債権一般の原則に従い、受益権譲渡の対抗要件は、受託者に対する通知か受託者の承諾です。実務では、譲渡承諾書をもって、対抗要件を具備しているわけです。

なお、信託銀行は譲渡を承諾すると受益者名簿に現在の受益者を記録します。こうして二重払いが防止されます。

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

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